一秒でも忘れないように、貴方のことを考える。

ねぇ、私の声が聞こえてる?
「聞こえてるさ。何でそんなこと」
ずっと一人だったからたまに分からなくなるの。
「俺も一人だったけど、そんなもんか?」
分からないわ。でも届くならいいの。
「相変わらず変な奴。ってかどうした?」
私との約束覚えてる?
「覚えてるに決まってるだろ」
破るつもりはない?
「約束、だからな」
ジャック、信じていいの?
「なんだよ、疑うのかよ」
ごめんなさい。でも不安になるの。
「そうだろうとは思ってる。とても長い時になる気がした」
だけど、守ってくれるのよね
「何度も言わせるなよ…」
いいえ。いいの。私はここにいるから。
「綺麗な満月だ」
そうね。ジャック。
「あの時も綺麗な満月だったな」
海もとても綺麗だったわ
「そしてお前も綺麗だった」
私はいつも私よ?
「でも俺には似合わないと思った世界だ」
…私も含めて?
「そうだ」

…ジャック。
「なんだ?」
生きるってどんなこと?
「なんだよいきなり」
命を奪う貴方にとって命って何?
「命?依頼で奪う命なら換金の一つみたいなものだとは思っている」
貴方自身の、命は?
「…お前が思っているより俺はきっと大切にはしてないな」
…でも、私、…いえ。何でもないわ。
「何だよ。はっきり言えよ」
…私は、私の命は、そんな貴方の命より大切じゃないの。
「はぁ?んな訳ないだろ」
そうよね。やっぱりおかしいとは思ってる。
「まぁ、似たもの同士ではあるけどな」
似たもの同士?
「少なくとも俺の命よかお前の命の方が大切にはされるべきとは思ってる」
誰かを守って死ねたらいいのに。
「のたれ死ぬのは御免だしな」
まだ死んでない?
「当たり前だよ。そんなにヤワな奴じゃねーよ」
そうよね。約束守らずに死ぬのは許さない。
「おぉこわいこわい」
私、ずっと信じているから。
「なるべく早く、終わらせるよ」
…待ってるから
「ああ。大丈夫だ。すぐにケリをつけてみせる」

そう言って、貴方は行ってしまったわ。
私は待つの。どこかで待ち続けるの。
一秒でも忘れないように。
何度も幾度の夜の中反芻させた貴方の声色
貴方の声が聞きたいから
自問自答、だけど貴方と話していたい
一秒でも忘れないように。
とても綺麗な満月の夜だから。
一秒でも忘れないように。
貴方のことを幾度も歌う。
だけど臆病な私は、貴方の名前すら口にすることが出来なかった。
ジャックと呼べず、でも何度も貴方の名前を叫んでいるの。
一秒でも忘れないように。

ジャック。
「どうした?」
私は嘘を吐いているの。
「青い鳥のことか」
…分かっていたのね。
「なんとなく、だけどな」
どうしても貴方と一緒にいたかった。
「ワガママだ」
ワガママよ。
「自覚はしてるんだな」
実際にはどれだけワガママかは分からないけれど。
「でも俺が気付いてないって思ったか?」
…分からない。
「俺がお前を突き放すと思ったか?」
…分からない。
「自信ないのか」
だって、貴方を見つめ続けたけれど、でも貴方の知らない所はたくさんある。
「俺の方がお前を全然知らねーよ」
ただお喋りが苦手なだけよ…。
「今はこんなにもよく喋るくせに」
本当、どうしてかしら。
「やっぱり意味不明な奴だわお前は」
…それでも良いわ。
「次こそは、ちゃんと話してくれるよな」
だけど話せるかしら。話すことは、あるかしら。
「お前はずっとここにいるから仕方ないかもしれないな…」
どうせだったら何も言わず手を引いて欲しい。
「前と何も変わらないじゃないか」
だって今まで通りでも、私は幸せだったもの。
「幸せ、か」

話したいことは本当は沢山ある。
だけどきっと面と向かえば、何も言えなくなる…。
私は笑えるだろうか?
今日も私は自問自答をする。
一秒でも忘れないように。

「なぁ」
何?
「これってとても虚しいことだって、分かってるだろ?」
…分かってるわ
「だけど」
私は
「一秒でも忘れないように」
一秒でも忘れないように
「想い続けて」
あなただけを
「かごめは」
ジャックは
「この世界という同じ籠の中にいるというなら」
私は青い鳥

あなたが長い夢から醒めた時に、私は側で歌を歌おう。
それまでは、あなたの歌を、一秒でも
一秒でも忘れないように













「もういいかい?」
「まあだだよ、まあだだよ」
「僕はズルをして、もう一回生きてしまって」
「許さないよ、二度とは」

一人で歌う。


サイト改名前に二話でうっかり完結しちゃったジャクかご。頑張って続けてみた。
しかしまさか二話で終わらせてしまったとは。

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