にやり「きみがいるとね、目障りなんだ」

ぼうし「よし、表へ出ろ」

にやり「いやだよ」

ぼうし「やむをえん むりやりでも」

にやり「しかたないねぇ」

ぼうし「前々から目ざわりと思っていたからね。そろそろブチ切らさせてもらうよ」

にやり「なんとでも言えばいいさ。そのかわりぼくも加減しないよ?」

ぼうし「どっからでもかかってこれば?」

にやり「先に言い出したのはきみなんだから、きみが先に言うべきだとおもうけど?」

ぼうし「そんなこと言って、びびってるんだろう?どうせ」

にやり「むしろびびってるのはきみのほうじゃないの?弱虫だねぇ」

ぼうし「弱虫だって?はっ!弱虫に言われたくはないよ!!」

にやり「ぼくのどこが弱虫だって?ほら?言ってごらんよ?早く?」

ぼうし「覚えてるだろ?あの時君は僕をほっぽりだして逃げたくせに」

にやり「逃げたんじゃない、ぼくは逃げたりしない」
にやり「むしろきみを放っておいてなにが悪い?」

ぼうし「何それ!ただの言い訳じゃないか!君はあの時、怖かったんでしょ?だから逃げた」

にやり「怖いだって?ぼくには怖いものなんてないさ!じゃあ教えてあげるよ、どうしてぼくが逃げ出したか」
にやり「・・・ぼくが逃げたらきみはひとりになる。そしたらきみは、ここにはいなくなるだろう?」
にやり「ぼくはきみを、この世界から追放したい」

ぼうし「だけど僕は知ってたよ。君は、本当は一人が怖いんだろう?」
ぼうし「ひとりになりたくないって言ったのはどこの誰だっけ?」
ぼうし「ぼくがここにいるのはどうしてだっけ?」
ぼうし「結局君は何もできないし、何もしようとしないんだ!!」

にやり「そんなこと言ったっけ?都合のいい夢でも見てたんじゃないのかい?」
にやり「ぼくは怖いものなんてないし、一人だって何とも思わない。」
にやり「きみがここにいる理由なんて、きみにしか分かるはずのないことだ」
にやり「だってぼくはきみが嫌いだからね」

ぼうし「・・・口先だけの嘘。作り物の笑顔。弱さを隠すためのただの強がり」
ぼうし「君を見ていると反吐が出る。この世界は君だけのものだとでも思った?」
ぼうし「君の世界じゃないんだよ、ここは。君でさえ、この世界の人間じゃない」

にやり「よくもまたそんなわかったような口を聞いて」
にやり「この世界は、ぼくだけの世界さ」
にやり「誰にも邪魔されることの無い、ぼくのための世界。」
にやり「そこにきみが無理やり乱入してきただけだ。」

ぼうし「分かるも何も、すごく嫌なことだけど、僕たちは似ているんだろう」
ぼうし「だから僕はこの世界にやってきた。君に会いにきた」
ぼうし「ひとりが嫌だからだろう?とても悲しかったんだろう?」
ぼうし「誰にも笑いかけてもらえないのが」
ぼうし「君の望んだこと。それが僕の存在理由だ」

にやり「きみとぼくが似てるだって?冗談はよしてくれよ」
にやり「・・・きみに、ぼくの」
にやり「何が分かるっていうんだい?」
にやり「きみはすべてを見透かしているつもりかもしれないけど」
にやり「ぼくはそんなに単純な存在じゃない。ぼくはぼく以外の何者でもない。」
にやり「ぼくが望んだものだって?そんなの、決まってるさ」
にやり「・・・何もかも、なくなってしまえばいいんだ」
にやり「世界なんていらないんだよ。全部なくなってしまって、みんな行き場を失えばいいんだ。」

ぼうし「だけど君は一方で望んでいたんだ。何も無くならない事を」
ぼうし「だから僕がここにいるんだ。・・・さっさと気づけばいいのに」
ぼうし「もう君を疎む奴も憎む奴もいない。だから帰ってこればいいのに」
ぼうし「君は弱虫な奴だよ。一人で生きていけるなんて、到底思わないほうがいい 」

にやり「随分と勝手な憶測で物を言うんだね。きみのそういうところが嫌いなんだよ。」
にやり「ぼくに帰る場所なんかないさ」
にやり「ぼくはぼくでしかないし、この世界はぼくだけしかいないんだ」
にやり「きみは外の世界でぶつぶつ言ってるだけなんだよ?」
にやり「そんなのってばかばかしいと思わないかい?」

ぼうし「ばかばかしい?君の思い込みのほうがばかばかしいよ!笑っちゃうね」
ぼうし「何もかも分かった気になってるくせに!それってただ目を背けてるだけだよ・・・?」
ぼうし「目を背けて、自分に都合の良い事だけ信じて。いつまでも続くと思った?」
ぼうし「頬つねってあげようか?痕が残るぐらい強く。もしくは自分でやってみなよ」
ぼうし「君と僕はこうして面と向かっている。君のいう君の世界に、僕はいるよ」

にやり「ぼくは何も間違ってない」
にやり「ぼくの頬をつねりたければ勝手につねればいいさ!そんなことしたって無駄だって分かるならね!」
にやり「きみは」
にやり「本当になにも分かってない」
にやり「この世界にきみの存在理由なんてないんだよ?」
にやり「この世界はぼくの心とつながってる。」
にやり「この世界そのものが、ぼくの心でありすべての望みであり真実なのさ!」

ぼうし「何度言ったら分かるんだい?君が望んだ末が僕だと」
ぼうし「本当に世界と君の心が繋がっているのだとしたら、僕を消してごらんよ!」
ぼうし「・・・できないだろう?何度念じても、何も起こらないだろう?」
ぼうし「これが君の望むこと。・・・あるいは」
ぼうし「君の世界じゃないんだろう。ここは」
ぼうし「馬鹿だよ。君は本当に馬鹿だ。何もかもが、自分の思い通りになると思って」
ぼうし「結局君も、ただの子どもでしかないんだ!」

にやり「・・・やっぱりきみはぼくになにもしなかった」
にやり「わかってたさ。きみがぼくに手出しできないこと」
にやり「・・・ここがなんの変哲も無いただのありふれた世界の一部だってことも」
にやり「だからぼくは」
にやり「ぼくの世界を作った」
にやり「誰にも邪魔されない、ぼくだけの世界を作ったんだ!」
にやり「きみには出来ないだろう!」
にやり「きみは何も出来ない!ぼくに何もできないんだ!」

ぼうし「人の優しさ・・・それを勘違いしてるんだね。図に乗ってるみたいだね・・・」
ぼうし「君が人を信じられないのは分かってるよ。痛いほどに分かる」
ぼうし「僕はやっぱり、君を傷つけたくない。でも気づいて欲しいよ」
ぼうし「この世界は張りぼてだよ。表面上だけの強がりで作られた砂の城だ」
ぼうし「誰も手出しできないんじゃなくて、誰も君に手出しをしようとしないだけだ」
ぼうし「勘違いしないで欲しいなぁ・・・」

にやり「きみがそう思うならそれでいいさ」
にやり「でも、ぼくがぼくである限り」
にやり「この世界はなくならないし、きみだってぼくをわかることはない。絶対に。」
にやり「ぼくは、ぼくだ」
にやり「誰にも邪魔はさせない」

ぼうし「そうはいかないさ!君のせいで僕はどこにも行けないんだから!」
ぼうし「君が僕を望んだから!君を君と認識する存在を必要としたからだよ!」
ぼうし「こんな世界すぐに出て行ってやりたいさ!でもそれはできない」
ぼうし「君の勝手な思い込みで、僕はここに存在してしまっている」
ぼうし「だから僕は君の邪魔をするんだ。閉じ込めた君に腹が立っているから」

にやり「なんだって?」
にやり「ぼくがきみをこの世界に閉じ込めただって?」
にやり「おふざけはその程度にしておいたほうがいいよ」
にやり「そんなこと誰が言ったんだい?きみの」
にやり「夢の中の住人かい?」

ぼうし「おふざけも何も、ここにどうして僕がいるのか説明できるのかい?」
ぼうし「僕は望んできたわけじゃないんだよ。あとは考えれば分かるだろ?」
ぼうし「いつまでも夢見てさあ、楽しい?巻き込まれるこっちの身にもなって?」
ぼうし「生憎君の夢の中で僕は眠れなくてさ。夢すら見れないんだよ」

にやり「どうしてきみがここにいるのかって?」
にやり「月だよ」
にやり「月がそうさせたんだ」
にやり「そんなにここが嫌なら、夜明けでも呼べばいいんだ」
にやり「きみにそんなことできないだろう?」
にやり「だってこの世界には朝が来ないんだから」

ぼうし「いいや朝は来るよ。僕は知っているから。夜明けを呼ぶ人を」
ぼうし「君を目覚めさせに来るよ。この長い長い夢から」
ぼうし「月光の色の冠の王子さまが、君に真実を教えるために」
ぼうし「この世界は永遠じゃない!!」

にやり「だめだ」
にやり「だってそれは」
にやり「それがなにを意味するか」
にやり「きみはわかっているはずだ」
にやり「この世界に朝が来るとき、それはこの世界が消えてなくなるんだ」

ぼうし「そしたら消えちゃうのかい?きみも?ぼくも?」
ぼうし「君はこの世界に依存しすぎなんだね。もうどうしようもないほどに」
ぼうし「だけど何もかも解決するさ。何もかも失ってしまっても」
ぼうし「終わるのは夜だ、この世界じゃないよ。僕でも君でさえもない」
ぼうし「朝の来た君の世界を、君は自分の世界と呼べるか、知ったこっちゃないけど」

にやり「・・・そうだよ」
にやり「何もかも、全部、無くなってしまうんだ」
にやり「きみにそれが出来るっていうのかい?」
にやり「ぼくの望みを、叶えようとでも言うのかい?きみごときが?」
にやり「できるものならやってみなよ!」
にやり「今すぐにでもね!」
にやり「それがぼくの望みでもあるんだから」
にやり「何もかもすべてなくなって、無になること」
にやり「それでぼくが消えたって構わない」
にやり「ぼくの存在なんてあってないようなものだからね」

ぼうし「・・・夜明けの足音が聞こえる」
ぼうし「ひょっとすると僕の存在意義はちょっと違ったのかもしれない」
ぼうし「ぼくは君の望んだ結果。だけど同時に、君の世界を揺さぶって曖昧なものにする」
ぼうし「そして見つけるんだよ。王子さまが。この夜しかない世界を」
ぼうし「王子さまの使命みたいなものだからね」
ぼうし「夜を追い越せない君に、夜明けを見せるということが」
ぼうし「きっと教えてくれるよ。結局何も終わらないけど、それが一番の望みだったってことを」

にやり「・・・それじゃあ」
にやり「よんでごらんよ」
にやり「その王子様とやらを!」
にやり「この世界に!」
にやり「出来るんだろう?それとも出来もしないことを言ったのかい?」
にやり「きみのことだからね。出来ないことでも出来るって言い張るからね。」

ぼうし「僕は何もできなかったけどね」
ぼうし「だけど、ほら、歌が聞こえるよ」
ぼうし「君には聞こえるかい?」

にやり「なんにもk・・・」
にやり「・・・」
にやり「ちがう、これは空耳だ」
にやり「ぼくにはなにも聞こえない!」
にやり「きみはやっぱりなにもできないんだね」
にやり「最初から期待なんてしていなかったけどね」
にやり「まあでも」
にやり「この世界が無くなれば」
にやり「きみは自由になれるんじゃないのかい?」
にやり「だってきみは」
にやり「この世界の住人ではないからね」
にやり「ぼくはこの世界と一緒に」
にやり「・・・」
にやり「消えて無くなるだけさ!」



リトプレ「無くなる?何を言っているの・・・?散々脱線してきた糞餓鬼が!」
リトプレ「いつまでたったら殴り合いを始めるのかと楽しみにしていたらこの体たらく!」
リトプレ「結局夜明けの時間が来たから事情によりさっさと話をおわらさせてもらうよ」
リトプレ「消えて無くなるとか消失論に浸ってるなよ餓鬼の癖に」
リトプレ「まだ十年ちょっとしか生きてないくせに年寄りぶったって痛いだけだから!!」
リトプレ「さて」
リトプレ「そこのおっさん臭い帽子の人に穴を空けて貰ったおかげで」
リトプレ「僕は夜明けを連れて入り込むことができたけど」
リトプレ「何か終わった?何か」
リトプレ「変わったかい?どうなのかな?ん??」

にやり「」
にやり「・・・」
にやり「なにも」
にやり「変わらない」
にやり「・・・だ」
にやり「これは夢だ」
にやり「そうだ」
にやり「夢の世界に連れて行かれたんだ!」
にやり「だってなにひとつ変わってない」
にやり「こんなのは、ぼくの望んだものじゃない!」

リトプレ「あー?ゆめー?何いってんのこの人ー」
リトプレ「そういうの、痛いから。分かる?それね、若気の至りだから」
リトプレ「ずっとそんなこと言ってると、大人になってから頭抱えて苦しむから」
リトプレ「本当の地獄はそこから始まるんだからね」
リトプレ「だから目覚めようよ。もうやめようよ」
リトプレ「何も終わらないし、何も変わらない。僕は幾度も見てきた世界だ」
リトプレ「もう君の心の闇も払われたから。外に出てもいいんじゃない?」
リトプレ「靴なんてなくてもいいし。一歩を踏み出せればそれでいいよ」

にやり「いやだ!」
にやり「ぼくはぼくだ!」
にやり「何も見えないんだ!聞こえないんだ!」
にやり「何もかも終わったんだ!」

リトプレ「いい加減気づけ馬鹿餓鬼!!祈りを込めて拳食らわせてやろうか!!」
リトプレ「さあ目を食いしばれ。何も見えないのなら今すぐ光を見せてやる!!」



にやり(だったもの)「・・・っ」
にやり「・・・」

にやり「これが」
にやり「せかいなの」
にやり「これが」
にやり「ずっとぼくが」
にやり「しりたがっていたものなの」
にやり「これが」
にやり「」
にやり「これが・・・」

ぼうし「・・・おかえり。この世界へ」

にやり「・・・ただいま」
にやり「なんて言うと思ったかい?」
にやり「たとえこれがぼくの望む世界だったとしても」
にやり「ぼくは変わらないよ」
にやり「きみとは違うからね」
にやり「ありがとうなんて期待するだけ無駄ってことだよ」

ぼうし「それでいいよ、もう。僕は疲れたから」
ぼうし「でも一眠りしたらまた君のところへ行くかもね」
ぼうし「君がまた変な世界作って閉じこもらないよう見張らさせてもらうよ」
ぼうし「君が君である限り僕もまた、僕だからね」
ぼうし「せいぜい、後悔しろよ」

にやり「いや、来なくていいし」
にやり「見張りなんて要らないさ」
にやり「きみが変わらないなら」
にやり「ぼくのほうから逃げてやるさ」
にやり「いくらでも逃げ道はあるからね」














おそらくこの話の発端はこれだった・・・

(54) かろり:D > かろり@みぞおちヒット「はあはあ・・・もっとののしってください・・・」


七島ジュンさんとの愛と友情の結晶です。お付き合いいただき有難う御座いました。
いくらなんでもやはり物書きさんと文で戦ってはいけない。そう強く感じた一日でした。


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